先輩からのメッセージ

膵臓研究室辰川 裕美子先生

2008年 広島大学卒

メッセージ

平成20年卒の辰川裕美子と申します。現在、消化器内科医と臨床研究開発支援センターでの他の先生方の研究計画立案支援という二足の草鞋で仕事をしています。
私は教育学部心理学科を卒業した後、がん緩和医療に携わることを志して医学部に再入学しました。消化器内科は扱う臓器も疾患の種類も、身につけるべき技術も多岐に渡ることに加え、研修医の時に難治がんの一つとされる膵がん・胆道がんの患者さんの診療に真摯にあたられる指導医の先生方の姿に感銘を受け、消化器内科に入局しました。後期研修では、幅広く消化器内科医としての基本を学び、またここでの経験が医師としての素養にもなると考え、救命科当直に入らせていただいたり、緩和ケア科での主治医も担当させていただいたりしました。大学病院に帰学後は、膵臓研究室に所属し、大学院でしかやれないことをやりたいとの思いから膵がんの基礎研究を行いました。

現在の二足の草鞋を履くことになった転機は大学院卒業後、医薬品医療機器総合機構 (PMDA) への出向を命じられたことでした。PMDAでは、体力勝負の臨床の日々からデスクワークに変わり、当初は全く未知の仕事で無力感すら感じましたが、主に医薬品の承認のための審査や、審査に共するデータを収集するための治験に関する相談業務を担当し、“新しい医療が患者さんの役に立つということをどうやって確認するのか“ということを学びました。薬理、薬物動態、毒性、品質、統計のエキスパートが集って科学と各種制度に忠実に、しかし現実的に、チームで様々な判断をするまさに学際的な業務の経験は、臨床、基礎研究からさらに新たな視野を私に授けてくれました。現在はこの経験を活かし、消化器領域に限らずあらゆる診療科の先生方の研究計画についてご相談をいただき、より質の高い、将来患者さんにとって有益な情報となる研究を実施していただくお手伝いをしています。自身の専門とは異なる領域の臨床課題を学び、改善に向けたアイディアを共有させていただけることは、とても楽しく有意義な仕事だと思っています。
こうして振り返ってみると、私はあまり何かを突き抜けて極めたということではありませんが、その時々でやりたいことを応援してくださる先輩方や同僚に常に恵まれ、貴重かつ希少な経験を積む機会に恵まれ、それが今の私の財産であることを実感します。

医師には、卒後何年経っても学ぶことがたくさんあります。初心を忘れず、しかしやりたいことを明確にして貪欲に新しいことを学ぶこと、学んだ知識や技術は患者さんのために惜しまず活かすこと、それを継続していれば、医師として充実した毎日が過ごせると思って頑張っています。