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2024年04月01日

檜山雄一先生 留学体験記 医薬品医療機器総合機構<PMDA>(東京都霞が関)

平成21年卒の檜山雄一と申します。私は、2017年4月から2018年3月までの2年間、東京の霞が関にある医薬品医療機器総合機構(PMDA)という組織に出向し、病院での勤務ではなかなかできような数多くの経験をさせていただく機会を得ました。

PMDAは主に医薬品、医療機器等に関する「健康被害救済業務」、「安全対策業務」、「審査関連業務」を一手に担っている組織です。私は新薬審査部に配属となり、承認申請された新薬の「承認審査業務」と、その前段階で申請のために行われる治験を支援する「相談業務」が、日々の主な業務となりました。これまでの生活と違い、完全にデスクワークが主体となりました。

広島大学はPMDAと包括的連携協定を締結しており、そうした背景もあって約2年ごとに代わる代わる医師が出向している状況でした。私が出向の話をいただいたときにはとても驚きましたが、この経験は他の人にはない貴重な武器になるかもしれないと直感し、すぐにお受けしました。これまで消化器内科からの出向者が多かったため、そうした先輩方のお話を聞けたことも後押しになりました。しかし一方で、当時の私は、治験はおろか臨床研究にも主導的に関与した経験はなく、新薬がどのようにして世に出てきているのかもよく知りませんでしたので、はっきり言ってPMDAで本当に仕事ができるのかと不安でいっぱいでもありました。

いざ飛び込んでみると、やはりすべてが新鮮で、学ぶことばかりでした。ただ、振り返ってみれば、PMDAで医師に求められているのは「臨床現場の観点」であり、その点においては私も多少は戦力になれたものと思います。日々の診療の経験がどれほど重要で価値のあるものであるかを知ることができたのも、出向で得た貴重な経験のひとつです。また当時、都心での電車通勤というものを味わったり、そもそも病院以外の環境で働くこと自体が初めてだったり、なんだか「外の世界をみてきた」ような感覚があります。苦労もしましたが、どれも新鮮で学びの多い経験ばかりでした。

もちろん、臨床試験のデザインや考え方について学んだこと、多少なりとも薬事に関する知識を得られたことは、広島大学に戻ってからも多いに役立っています。現在、広島大学では主に臨床研究の立案の支援をしていますが、消化器内科のみならず多くの診療科や研究室の研究・開発に関わり、その一助となれることにとても意義を感じています。PMDAでの2年間がなければ、とても自分が現在のように主体的に臨床研究のデザインを助言したり発案したりできるレベルには何年かかっても到達できなかっただろうと思います。

東京ではずっとデスクワークだけをしていたわけではなく、週のうち1日は研修というかたちで診療もさせていただいており、それについては東京慈恵会医科大学附属病院内視鏡部で2年間大変お世話になりました。消化管内視鏡の技術や知識を非常に多く得ることができ、PMDAへの出向ということで東京に赴いたものの、内視鏡のスキルも着実にレベルアップできたのはうれしい副産物でした。加えて、幸いなことにPMDAでも東京慈恵会医科大学附属病院でも暖かい同僚や上司に恵まれて、多くの方々と知り合えたことも貴重な財産となりました。またその他にも、せっかくの東京在住の機会を活用して、全国学会や研究会にも多く参加できましたし、仕事以外の面でも色々と見聞を深めることができました。

PMDAは、国内留学先としては、少々変わったところだと思います。しかしながら、私と同じように様々な大学から出向してきている医師も当時から多くいましたし、まったくめずらしいわけではありません。PMDAでの経験により臨床研究に対しても日常診療に対しても大きく見方が変わりましたし、薬事や臨床試験に関する造詣を深めることは、これからの研究・開発を主導していこうとする方にも多いに役立つものと思います。関心がある方や機会がありそうな方は、ぜひこうした経歴も検討してみてはいかがでしょうか。