2025年04月08日
才野 正新先生 留学体験記 昭和大学江東豊洲病院(東京都江東区)
このたび、田中秀典先生に引き続き、2024年10月から2025年3月までの半年間、東京都に所在する昭和大学江東豊洲病院に国内留学の機会をいただきました。
昭和大学江東豊洲病院について
田中秀典先生の体験記にも記載されているとおり、昭和大学江東豊洲病院では、食道アカラシアに対するPOEM(Peroral Endoscopic Myotomy : 経口内視鏡的筋層切開術)や難治性GERD(Gastroesophageal Reflux Disease : 胃食道逆流症)に対する低侵襲内視鏡的治療など機能性疾患に対する先進的な治療が盛んに行われています。
これまで食道アカラシアの症例に接する機会は極めて限られていましたが、昭和大学江東豊洲病院にはほぼ毎日のように新規のアカラシア症例が紹介されており、その患者数の多さに大変驚くとともに、限られた半年間という期間の中でも多くの症例を経験させていただきました。
また、大学病院でありながら内科と外科が同一の医局を構成しており、内科・外科間の垣根が低く、密な連携体制が構築されていたことが印象的でした。食道アカラシアおよび難治性GERDの治療において外科的治療が必要となる場面もあり、機能性疾患における診療においても外科との連携が重要であることを感じました。
さらに、学会や研究会において積極的に情報発信を行っており、研究会における内視鏡ライブ配信についても自施設内で準備されていたことにも大きな衝撃を受けました。
留学を通じて学んだこと
食道アカラシアや難治性GERDについて、私はこれまで最低限の知識と限られた経験しか有しておりませんでした。しかし、多くの実症例を経験させていただく中で、丁寧なご指導を受けながら、また自ら検査結果や病態について考えることで、内視鏡で消化管機能を評価すること、食道内圧測定や食道造影、24時間pHモニタリングといった検査結果の評価や、治療方針の考え方について次第に理解を深めることができました。私が留学中に所属していた上部消化管グループのみならず、医局全体も明るく和やかな雰囲気で温かく迎え入れていただき、モチベーションの高い先生方の指導を受けることのできる非常に恵まれた環境で勉強できたと感じております。


食道アカラシアを代表とする食道運動機能障害には、自分がこれまで知らなかったような病態も存在することや、GERDに関してもその診断・評価から内視鏡治療を含む治療についても現在アップデートされているところであるということもわかり、機能性疾患の難しさも学びました。半年という期間では到底学び尽くすことはできず、今後も引き続きこの分野について深く学び続けていきたいと考えております。
また、POEMに関しても、実際に自ら手技を経験する中で、その難しさと、安全かつ有効な治療を実現するためには多くの注意点があることを、身をもって学びました。今後は広島においても一つ一つの症例に真摯に向き合いながら、適切な治療を提供できるよう研鑽を重ねてまいります。
加えて、治療によって症状が改善した患者さんから「治療を受けてよかったです」と直接お言葉をいただけた際には、機能性疾患に対する治療の意義とやりがいを強く実感するとともに、自らの診断と治療が患者さんのその後の人生に大きな影響を与えるという事実に対する責任の重さも痛感いたしました。
最後に
医師7年目であり、大学に帰学して2年目というまだまだ経験の浅い立場ではありながら、このような貴重な機会をいただけたことに感謝しております。一つ一つの検査や治療の中で様々な視点を学んだり、これまでなかった経験を得ることができ、今回の留学を通して医師としての視野が大きく広がったのではないかと考えております。
今後も、この留学で得た知識や経験、そして築くことができたご縁を大切にしながら、日々の診療と学びを積み重ねてまいります。
最後に、井上晴弘教授および上部消化管グループの先生方をはじめとする昭和大学江東豊洲病院の先生方・スタッフの方の指導・支援と、岡志郎教授および同門の先生方の支援があってこのような貴重な経験が出来ました。この場をお借りして、改めて深く御礼申し上げます。
